紫

紫は、手の届かない高さの色として読まれてきた。紫草という草の根を掘り、何度も染め重ねてようやく出る色で、日本では冠位十二階の最上位、西洋では貝一万個からわずかしか取れない皇帝の色だった。夢でも、日本の縁起でも、紫が出てくるところには「一段上へ引き上げられる」という筋が通っている。そこに、赤の熱と青の静けさを混ぜ合わせた色として、癒しと、目に見えない世界への感受性の読みが重なる。
紫の夢
紫が印象に残る夢は、夢占いでは格の高い吉夢とされることが多い。表しているのは、品位、精神性、癒し、そして人から一目置かれること。
読み分けの鍵は、その紫が赤みだったか、青みだったか。紫は赤と青のあいだにある。赤紫やピンクがかった紫なら、恋や情の熱が、落ち着いた形で深まっていく。青紫や藤色なら、心が静まって、勘が冴えていく。濃く深い紫なら、自分の立場や役目が一段上がる時期に来ている。
紫の服・紫の着物の夢
自分が紫の服を着ていた夢は、周りから認められ、任されることが増える知らせ。昔、紫の衣は高い位の人だけが許された色で、僧のなかでも天皇から許しを得た高僧だけが紫の衣をまとった。
紫の着物の人が出てきた夢は、目上の人や導き手との縁。年配の女性なら、家や先祖の側から見守られている。
紫の光の夢
紫の光に包まれる、遠くに紫の光が見える夢。スピリチュアルでは、紫は頭のてっぺんにあたる、いちばん高いところの色とされる。祈りや願いが届いている知らせで、疲れていたなら、深いところから癒されていく夢として受け取っていい。
紫の雲・紫の空の夢
紫の雲は、昔からめでたいしるしとされてきた(下の「日本の縁起」)。空に紫の雲がたなびく夢は、自分や家にとって晴れがましい出来事が近い。紫に染まった夕空や明け方の空なら、昼と夜、ひとつの時期と次の時期の境目にいる。
紫の花の夢
藤、菖蒲、桔梗、ラベンダー。紫の花の夢は、上品な好意と、長く続く縁の知らせ。垂れ下がる藤の花房なら、ゆかりの深い人から引き立てを受ける。たくさん咲いていたなら、周りの人から敬われている時期。紫の蓮は → 蓮
紫の蛇・紫の蝶の夢
紫の蛇は、金運よりも、直感や霊感が強まる夢。紫の蝶は、目に見えない世界からの便りで、身近な人の思いが届いている。→ 蛇、蝶
紫の髪・紫の宝石の夢
自分の髪が紫になる夢は、人と違う感性が表に出てくる時期。紫の宝石(アメジスト)を手にする夢は、心の平静を取り戻す知らせ。アメジストの名は、ギリシャ語の「酔わない」から来ていて、昔は悪酔いを防ぐ石とされた。→ 髪の毛
現実で紫に出会ったとき
- 紫色の空を見た:日の出前や日没後、空が紫に染まる時間。境目の時間の色で、願いごとをするのにいいとされる
- 紫の蝶が目の前を飛んだ:見守りの知らせとして受け取られる。→ 蝶
- 紫のオーラと言われた:スピリチュアルでは、紫のオーラは高い精神性と、人を癒す力の色とされる
- 紫の光が見えた:目を閉じたときや、祈っているときに紫の光が見えるのは、心が深く静まっているしるしとされる
日本の縁起
日本で紫が特別な色になったのは、染めるのがいちばん難しい色だったから。紫草の根(紫根)を砕いて何度も染め重ね、ようやく深い紫になる。
- 冠位十二階:推古天皇11年(603年)、聖徳太子の時代に定められた十二の位で、最上位の「徳」は紫の冠。紫・青・赤・黄・白・黒の順に並んだ
- 紫野:『万葉集』の額田王の歌「あかねさす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る」の紫野は、紫草を育てるため、人の立ち入りを禁じた野。紫はそれほど大切に守られた草だった
- 紫衣事件:紫の衣を僧に許すのは朝廷の権限だった。寛永4年(1627年)、幕府は後水尾天皇が与えた紫衣の許しを無効とし、抗議した沢庵らは流罪になる。天皇はその後、位を譲った。一枚の紫の衣が、朝廷と幕府の力比べになった
- 紫の雲:藤原公任は、藤原道長の娘・彰子が入内するときの屏風に「紫の雲とぞ見ゆる藤の花いかなる宿のしるしなるらむ」と詠んだ。紫の雲のように咲く藤の花を、家が栄えるしるしとして祝った歌。仏教でも紫の雲はめでたいしるしで、阿弥陀仏と菩薩たちは紫の雲に乗って、念仏した人を極楽へ迎えに来るとされた
- 紫のゆかり:『古今和歌集』の「紫のひともとゆゑに武蔵野の草はみながらあはれとぞ見る」。一本の紫草があるから、武蔵野の草すべてがいとしく見える。『源氏物語』の紫の上の名は、この歌から来ていて、光源氏が慕い続けた藤壺のゆかりの人であることを表す。→ 好きな人
- 古希と喜寿:70歳と77歳の祝いの色は紫。長く生きた人を、位の高い人と同じ色で敬う。→ 赤(還暦の赤)
紫は縁起が悪いのか
「紫は縁起が悪い」と聞いて調べる人は多い。そう言われる元のひとつは、歌舞伎の病鉢巻。病人の役は、紫の鉢巻を頭の左で結ぶ約束になっている。ただ、これは紫根に熱を下げ毒を消す薬の力があるとされ、紫根で染めた鉢巻で病を軽くしようとした名残。紫は病の色ではなく、病を払う色だった。同じ紫の鉢巻でも、結び目を右にして形を変えると、『助六』の勇ましい若者のしるしになる。
- 袱紗の紫:紫の袱紗は、祝儀にも不祝儀にも使える。慶弔のどちらの場でも失礼にならない、格の高い色とされてきた
- 仏事の紫:紫の花や紫の布は、お供えや法要にも使われる。仏事に使われるのは、尊い色だから
- 紫の財布:品よくお金を守る色として選ばれる。→ 財布
タロットの紫
ウェイト版の大アルカナで、紫が大きく描かれるのは 正義 の一枚。
- 正義:赤い衣の女性が、右手に剣、左手に天秤を持ち、二本の柱のあいだに座る。背後に垂れているのが紫の帳。感情に流されず、両方の言い分を聞いて決める札。紫の服の夢で、大事な判断を任される予感がしたなら、この札と同じ場所に座っている
- 審判:紫そのものは描かれないが、天使が雲の中からラッパを吹き、人々が起き上がる。紫の雲に乗って迎えが来る来迎の図と、雲の上から呼びかけられる構図が重なる
紫の雲や紫の光の夢を見た日に 審判 が出たなら、呼ばれている先へ顔を上げていい。
世界の象徴としての紫
- ティリアンパープル:古代地中海で、アッキガイの仲間の貝から取った紫の染料。貝一万個からおよそ1グラムしか取れず、金より高かった。ローマでは4世紀には皇帝だけがまとえる色になった
- 紫の部屋で生まれた者:東ローマ帝国では、皇帝の在位中に宮殿の「紫の間」で生まれた子を「ポルフュロゲネトス」と呼び、正統な皇子・皇女のしるしとした
- 紫禁城:北京の皇宮の名は、天帝の住まいとされた北極星のまわりの星域「紫微垣」から「紫」の字を取っている。紫は、天の中心の色だった
- 祈りの紫:キリスト教の教会では、復活祭の前の四旬節や、降誕祭を待つ待降節に紫を用いる。悔い改めと、待つ時間の色
一本の紫草のために、武蔵野の草すべてがいとしく見える。夢に出てきた紫も、その一色のおかげで、目覚めたあとの一日が少し違って見えるように届いている。

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今日の一枚
大アルカナから一枚。
