黒

黒は、日が暮れたあとの色として読まれてきた。何もないのではなく、まだ見えていないものを抱えている色。夢でも、日本の縁起でも、タロットでも、黒が出てくるところには「形になる前のものが、暗がりで育っている」という筋が通っている。だから黒は、怖れの色であると同時に、魔を寄せつけない守りの色、そして福の神の名にも入る色になった。
黒の夢
黒が印象に残る夢は、不吉に感じられやすいが、夢占いでは凶夢と決まってはいない。表しているのは、まだ言葉になっていない気持ち、隠れている力、そして自分を守ろうとする心。
読み分けの鍵は、その黒の正体が見えたかどうか。影や煙、もやのように形のない黒は、まだ名前のついていない不安や予感。黒い犬や黒い服のように輪郭のはっきりした黒は、すでに形をもった力で、向き合えば味方にできる。
黒い影・黒い人に追いかけられる夢
黒い影が近づいてくる、全身が黒い人に追われる、引っ張られる。黒の夢でいちばん多く検索される夢。追ってくるのは、自分が後回しにしている気持ちや、見ないようにしている心配ごと。顔が見えないのは、それがまだ何なのか自分でも分かっていないから。振り返って影の顔を見ようとした夢なら、その不安はもう正体を現しかけている。→ 追いかけられる、知らない人
金縛りのなかで黒い影を見た夢は、心も体も重たくなっている時期に見る。影がそのまま去っていったなら、重たいものが一つ抜けていった。→ 幽霊
黒い服の人・喪服の夢
黒いスーツの男性、黒いワンピースの女性。知らない人でも、改まった場に立ち会う予感を表す。仕事や家族のなかで、けじめをつける時期が近い。
亡くなった人が黒い服で出てきた夢は、何かを見送る支度をしている知らせ。見送られているのは、その人ではなく、見た人が手放そうとしている古い習慣や悩みであることが多い。→ 亡くなった人、葬式
自分が黒い服を着る夢
黒をまとうのは、自分を守り、気持ちを引き締める夢。人の目や言葉から少し距離を置きたい時期。似合っていると感じたなら、自分の芯が固まってきている。
黒い生き物の夢
- 黒い犬:頼もしい守り手。なついてきたなら、口数は少なくても信頼できる人が近くにいる。→ 犬
- 黒い鳥:知らせと導き。熊野の八咫烏のように、黒い鳥は道案内の鳥でもある。大群だったなら、周りの声が多すぎて疲れている。→ 鳥、カラス
- 黒い蝶:亡くなった人の気配や、深い変化の知らせ。→ 蝶
- 黒い馬:抑えてきた力が、走り出したがっている。→ 馬
- 黒い蛇・黒猫・黒い龍:それぞれの項目で詳しく読んでいる。→ 蛇、猫、龍
黒い雲・黒い煙の夢
空を覆う黒い雲は、気持ちが曇っている時期。雲が晴れていく夢なら、その曇りは抜けかけている。火事の黒い煙は、胸の内にたまった怒りや焦りが外に出たがっている。→ 雷、雨、火事
黒い水の夢
蛇口やトイレから黒い水が出る夢は、ためこんできた疲れや言えなかった言葉が、流れ出ていく夢。出きったあとに水が澄んだなら、心の掃除が済んだ。→ 水、トイレ
顔・歯・目が真っ黒になる夢
自分の顔が黒く見える夢は、本心を人に見せにくくなっている。歯が黒くなる夢は、言いたいことを飲み込んでいるしるし。江戸時代には、既婚の女性は歯を黒く染める「お歯黒」をしていた。黒い歯は、嫁いだ人のしるしでもあった。→ 歯、目
現実で黒いものに出会ったとき
- 黒いトンボ(ハグロトンボ):止まると羽をゆっくり開いて閉じる仕草が手を合わせるように見えることから、「神様トンボ」と呼ばれてきた。お盆の頃に現れるので、先祖の魂を運んでくるとも言われる
- 黒いてんとう虫:黒地に赤い点のナミテントウは、幸運の虫とされる。赤い点が二つなら、恋愛の運が上向くしるしとも言われる。→ 赤
- 黒い羽根を拾った:守りのしるしとして持っておいていい。カラスの羽根なら、八咫烏と同じ導きの鳥の羽根
- 黒猫が前を横切った:日本では福猫の通り道。→ 猫
- 黒い影・もやが見えた:目の端をよぎる黒い影は、形になる前の気がかりが見えたもの。気になったなら、その日は早めに休んで、重たいものを下ろす
日本の縁起
日本の古い色の名前は、明るさで分けられていた。「あか」は夜が明ける「明(あ)け」と、「くろ」は日が「暮(く)れる」「暗(くら)い」と同じ根をもつとされる。黒は、夜の側の色。
- 喪の黒は明治から:日本の喪服は、長く白が主だった。1897年(明治30年)の英照皇太后の大喪で、国民に黒の喪服や喪章が求められ、そこから黒が広まった。黒を縁起が悪いと感じるのは喪の色の連想からだが、喪の黒の歴史はまだ百三十年ほど。→ 葬式、白
- 黒は格の色:黒留袖や黒紋付は、いちばん格式の高い礼装。黒い振袖を選んでよいか迷う人もいるが、黒はもともと改まった晴れの場の色
- 黒豆:おせちの黒豆は、「まめに」働き、日に焼けて黒くなるほど元気に暮らせるように、という願い
- 大黒天:七福神の大黒さまは、インドの神マハーカーラ(偉大な黒き者)が元になった。黒い神が、日本で福の神になった
- 八咫烏:神武天皇を熊野から大和へ導いたと伝わる三本足の烏。熊野三山では、神の使いの導きの鳥として信仰されている。→ カラス、神社
- 黒い財布:守りを固めて、お金を逃がさない色とされる。→ 財布
タロットの黒
ウェイト版では、黒は夜と、まだ見えていない側の色として描かれる。
- 女教皇:両脇の柱の一本が黒い。黒い柱には「B」の文字。隠された知恵の側
- 戦車:車を引くのは、黒と白の二頭のスフィンクス。逆の方へ引き合う力を、御者が一つの方向へまとめる
- 悪魔:暗い背景のなか、台座に男女が鎖でつながれている。ただ、首の鎖はゆるく、自分で外せる
- ソードの9:暗い部屋で、ベッドから身を起こし、顔を両手で覆う人。悪い夢から覚めた夜の札
- ソードの10:黒い空の下に倒れた人。けれど遠くの地平は明るみ始めている
黒い影の夢で目が覚めた日に ソードの9 が出たなら、夢と札が同じ夜を映している。札の剣は背後の闇に並んでいるだけで、その人に触れてはいない。夢の影も、まだ何も奪っていない。
世界の象徴としての黒
- 玄武:中国の四神で、北を守る黒い亀と蛇。五行の「水」にあたり、冬の色。種が土の中で冬を越すように、黒は蓄える季節の色でもある。→ 亀、蛇
- ケメト(黒い土地):古代エジプトは自分の国をケメト、「黒い土地」と呼んだ。ナイルの洪水が運ぶ黒い泥が畑を肥やしたから。黒は豊かさと再生の色で、再生の神オシリスは黒い肌で描かれることがあった
- ニグレド:錬金術で、金を生む作業の最初の段階。材料をいったん黒く崩すところから始まり、白(アルベド)、赤(ルベド)へ進むとされた。→ 白、赤、金色
黒い夢を見た夜は、この窯に最初の火が入ったところに当たる。黒のあとには、白が来て、赤が来る。

関連する項目
白・赤・金色・蛇・猫・龍・犬・カラス・鳥・蝶・亀・追いかけられる・幽霊・亡くなった人・葬式・財布
今日の一枚
大アルカナから一枚。
