狐

狐は、神様の蔵の鍵を預かる使いであり、姿を変える知恵者として読まれてきた。稲荷の狐は実りと商売の神様のお使いで、口に鍵や玉をくわえて社を守る。一方で、人を化かし、夜に火を灯して行列を組む、少し怪しい隣人でもある。夢では、実りの入口と、見えている姿の裏にある本当の姿の両方を表す。どちらの顔で出てきたかで、狐の夢の読みは分かれる。
狐の夢
夢占いでは、狐は知恵、機転、したたかさ、そして商売や仕事の実りの象徴。狐の夢は、何かを手に入れる入口に立っているとき、あるいは、誰かの言葉や自分の思い込みの裏を確かめたくなっているときに見やすい。
読み分けの鍵は、その狐がどこにいたか。神社の境内、赤い鳥居のそば、きちんと座ってこちらを見ていた狐は、お使いの顔の狐で、実りの知らせ。野原や家の中を走り回る狐、人の姿と入れ替わる狐は、化ける顔の狐で、物事の見え方が変わる知らせになる。
白い狐の夢
狐の夢のなかでいちばんの吉夢。白狐は稲荷の神様のお使いとされてきた。白い狐がこちらを見ていた、先を歩いて案内してくれたなら、願いが神様に届いている。稲荷神社で白い狐に会う夢なら、仕事や商売で、積み重ねてきたことが形になる。→ 白、神社
黒い狐の夢
まだ表に出していない知恵や、胸にしまっている計画。夢占いでは、黒い狐は見えないところで守ってくれる力とも読まれる。怖かったなら、自分の中の計算高さを自分で持て余している。→ 黒
神社の狐の像が出てくる夢
稲荷の狐の像は、口に何かをくわえていることが多い。夢の像が何をくわえていたかで読む。
- 鍵:稲荷の神様の蔵の鍵とされる。閉じていた扉が開く、手が届かなかったものに届く知らせ。→ 鍵
- 玉:神様の霊力を表す宝珠。自分の力が満ちてくる
- 稲穂:実りそのもの。働いた分が収入として返ってくる。→ お金
- 巻物:知恵。学びや資格が実を結ぶ
像が動き出した、話しかけてきたなら、お使いが自分のために腰を上げている。→ 神様
狐に化かされる夢
見えていたものと、本当の姿が違っていたことに気づく夢。夢の中で狐に化かされていたと分かったなら、現実でも、思い込みがほどける時期に来ている。化かされたまま目が覚めたなら、うまい話や、うますぎる約束をもう一度見直す知らせ。
狐がなつく・子狐の夢
警戒心の強い狐がなついてくる夢は、なかなか心を開かなかった相手との距離が縮まる吉夢。かわいい子狐の夢は、まだ小さな才覚や、育ちはじめた商売の芽。
狐に噛まれる夢
夢占いでは、身近な誰かの計算や駆け引きに巻き込まれる知らせとされる。痛かったなら、その駆け引きにもう気づいている。噛まれたあとで狐が逃げていったなら、深追いしなくていい。
狐が家に入ってくる夢・追い払う夢
狐が家に入ってくる夢は、思いがけないところから実りが入ってくる夢。白い狐や、おとなしく座る狐なら、なお吉。家の中を荒らす狐を追い払う夢は、自分の暮らしに入りこもうとする甘い誘いを、自分で見分けて退けられる知らせ。→ 家
九尾の狐の夢
大きな力と、人を惹きつける魅力の夢。九つの尾は、もとは中国で太平の世に現れるめでたい獣とされた(下の「世界の象徴としての狐」)。尾が美しく広がっていたなら、自分の魅力を存分に使っていい時期。
狐のお面の夢
自分が狐のお面をつけていたなら、本音を隠して、別の顔で人と会っている。人がお面をつけていたなら、その人の本心はまだ見えていない。お祭りの夜のような明るい夢なら、別の顔で過ごすことを楽しめている。
狐の嫁入りの夢
晴れた空から雨が降る中を、狐の行列が進む夢。思いがけない縁や、人知れず進んでいた話がまとまる知らせ。→ 雨、結婚
現実で狐に出会ったとき
- 野生の狐を見た:稲荷のお使いに出会ったとして受け取れる。野生の狐は人の前に姿を見せることが少ないので、見かけたこと自体を、実りの入口に立った合図として読む
- 夜に狐を見た:狐は夜の生き物で、人の目の届かない側を知っている。夜に出会ったなら、表に出ていない情報や、自分の勘に耳を傾ける時期
- 狐が前を横切る:流れの変わり目の合図として読める。狐なら、いつもの道から少しそれてみると、思いがけないものが手に入る
- 晴れているのに雨が降った:狐の嫁入り。→ 雨
日本の縁起
- 稲荷の使い:稲荷の神様は、五穀の実りと商売の神。狐は神様そのものではなく、神様のお使い(眷属)。→ 神様、神社
- 初午:和銅4年(711年)2月の初午の日に、稲荷の大神が京都の稲荷山に鎮まったと伝わる。今も2月最初の午の日には、伏見稲荷大社をはじめ全国の稲荷社で初午の祭りがある
- 狐と油揚げ:狐の好物はネズミの油揚げとされ、狐を捕らえる罠にも使われたという。お使いの狐には、殺生を避けて、代わりに豆腐の油揚げを供えるようになったという説がある。その油揚げに、稲荷の神様がもたらす米を詰めたのが稲荷寿司とされる
- 葛の葉:狩人に追われた白い狐を助けた安倍保名のもとに、葛の葉という女性が現れて妻になり、子をもうける。子が5歳になったとき正体が白狐だと知られ、「恋しくば尋ね来て見よ和泉なる信太の森のうらみ葛の葉」と歌を残して森へ帰った。その子が、のちの陰陽師・安倍晴明とされる
- 王子の狐火:江戸の王子では、大晦日の夜、関八州の狐が大きな榎の下に集まって装束を整え、王子稲荷へ参ったと伝わる。村人は、連なる狐火の数で翌年の実りを占った。歌川広重が『名所江戸百景』(1857年)に描いている
- 九尾の狐と殺生石:美女に化けて鳥羽上皇に近づいた九尾の狐が、陰陽師に正体を見破られて那須へ逃れ、石になったという伝説。栃木・那須の殺生石は、2022年3月、二つに割れているのが見つかった
- 縁起が悪いと言われるわけ:人を化かす、人にとり憑くという話が各地に残るため。ただ、同じ狐が稲荷の使いとして商売の守りにもなっている。狐の縁起は、怖い面と福の面が一体になっている
タロットの狐
ウェイト版に狐が描かれた札は無い。狐の化ける力、夜の目、機転に重なる札を並べて読む。
- 月:二つの塔の間に道が延び、犬と狼が月に吠え、池からザリガニが這い上がる。夜の光の下で、物の姿が本当とは違って見える札。狐に化かされる夢のあとにこの札が出たなら、今見えている形は、まだ仮の姿。→ 月、犬
- ソードの7:野営地から、男が5本の剣を抱えて忍び足で抜け出し、2本を地面に残していく。機転としたたかさの札。狐に噛まれる夢と重なったなら、駆け引きの相手が近くにいる
- 魔術師:机の上に、杖・杯・剣・金貨の四つの道具を並べ、片手を天へ、片手を地へ向ける。狐の像が鍵・玉・稲穂・巻物をくわえるように、実りを呼ぶ道具がもう手元にそろっている札。白い狐の夢の日にこの札が出たなら、始めていい
世界の象徴としての狐
- 青丘の九尾の狐:中国の古い地理書『山海経』に、青丘の国に九つの尾をもつ狐がいると記される。後の時代には、天下が治まるときに現れるめでたい獣とされた。日本では、美女に化けて国を傾ける妖狐の話として伝わった(上の「九尾の狐と殺生石」)
- 狐のルナール:12世紀フランスの動物物語『狐物語』の主人公。力の強い狼を知恵で出し抜く。この物語があまりに広まったので、フランス語では、狐を指す言葉が主人公の名 renard に替わった
- 狐の火:フィンランド語でオーロラは revontulet、「狐の火」。北の野を駆ける狐の尾が雪を舞い上げ、その火花が空に灯ったのだと語られる
フィンランドでは狐の尾が北の空に火を灯し、江戸の王子では、村人が大晦日の榎の下に連なる狐火を数えて次の年の実りを占った。夢に狐が出てきたなら、その狐がどこにいて、口に何をくわえていたかを覚えておくといい。

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