ネズミ

ネズミは、大黒さまの使いとして、小さな蓄えを運んでくる生き物として読まれてきた。十二支の一番目で、子をたくさん産み、夜も目がきく。日本では、ネズミのいる家は栄え、いなくなる家は傾くと言われてきた。一方で、蓄えた米をかじり、少しずつ減らしていく厄介者でもある。夢では、暮らしの中の小さな出入りを表す。ネズミが家に入ってきたか、何かをかじっていたかで、読みは福の側にも、気がかりの側にも分かれる。
ネズミの夢
夢占いでは、ネズミは小さな財、子孫繁栄、知恵と抜け目のなさ、そして、気づかないうちに増えていく心配ごとの象徴。ネズミの夢は、お金の出入りや、家の中の細かなことが気になっているときに見やすい。
読み分けの鍵は、ネズミが何をしていたか。家に入ってきた、何かをくわえて運んできた、穀物のそばでおとなしくしていたなら、小さな福が積み上がっていく吉夢。米や大事な物をかじっていた、壁の中を走り回っていたなら、見えないところで減っていくもの、先延ばしにしている気がかりに目を向ける知らせになる。
白いネズミの夢
ネズミの夢のなかでいちばんの吉夢。白いネズミは大黒さまの使いとされ、すみついた家に富をもたらすと言われてきた。白いネズミが寄ってきた、たくさんいたなら、金運と商売の運が上向く。白いネズミが死んでいた夢は、ひとつの蓄えを使い切って、次の実りへ切り替わる時期。→ 白、お金
灰色・茶色・黒いネズミの夢
灰色のネズミは、はっきりしない不安や、言いそびれていること。茶色のネズミは、暮らしの細かな出費や、家計のやりくり。大きな茶色のネズミなら、そのやりくりが少し大きくなっている。黒いネズミは、人の陰の動きに気づく夢で、夢占いでは、身近なところの小さな嘘やずるさを見抜く知らせとされる。→ 黒
ネズミが大量に出る夢・ネズミの赤ちゃんの夢
ネズミの群れが押し寄せる夢は、細かな用事や心配ごとが、一度に増えている知らせ。怖かったなら、ひとつずつ片づければ数はすぐ減る。ネズミは子を多く産むので、赤ちゃんネズミがたくさんいる夢は、家族や仕事が育ち、にぎやかになる繁栄の夢としても読まれる。
ネズミに噛まれる夢
身近な人の小さな不満や、見過ごしてきた出費に気づく夢。痛かったなら、それはもう放っておけない大きさになっている。痛くなかったなら、軽く手当てするだけで済む。噛まれた場所が指なら、手をつけている仕事の中に、ほころびがひとつある。
ネズミを捕まえる・退治する・追い出す夢
気がかりを自分の手で片づける吉夢。ネズミを捕まえた、追い出したなら、じわじわ減っていたお金や気力の漏れ口がふさがる。ネズミを殺す夢も、抱えていた問題を終わらせる夢として読む。ただ、家に入ってきた白いネズミを追い払う夢は、せっかくの福を遠ざけていないか、振り返る夢。
死んだネズミの夢
ひとつの心配ごとが終わる夢。長く気になっていた細かなことが、気づけば片づいている。たくさんのネズミが死んでいた夢は、積もっていた小さな悩みが一度に消えていく。
ネズミに追いかけられる夢
追いかけてくるのは、小さいけれど数の多い用事や、後回しにしている支払い。逃げ切れないなら、立ち止まって一つずつ数えてみる時期。→ 追いかけられる
猫とネズミが出てくる夢
猫がネズミを追う夢は、自分の勘が、身の回りの小さな問題を片づけていく夢。ネズミの側で猫から逃げていたなら、誰かの鋭い目を気にしすぎている。→ 猫
ネズミの夢と宝くじ
白いネズミの夢、ネズミが物をくわえて運んでくる夢は、大黒さまの福の夢として、宝くじを買うきっかけにされる。→ 宝くじ
現実でネズミに出会ったとき
- 家にネズミが出た:昔から、ネズミは家にいるのが吉、いないのが凶とされてきた。江戸時代の国学者・本居宣長も『古事記伝』に「鼠は人の害をなす物の、家の内に在るを吉しとし、無きを凶しとする」と書いている。家運の衰える家にはネズミがいない、という言い伝えもある。→ 家
- ネズミが外から入ってきた:広島県では、外から入ってくるネズミを「向こうネズミ」と呼んで、縁起がいいとした。福が入ってくる形になっている
- 白いネズミを見た:白いネズミのいる家は喜ばれてきた。大黒さまの使いが来たとして受け取れる
- 神社でネズミの像に会った:京都・哲学の道のそばの大豊神社では、境内の大国社の前に、狛犬の代わりに狛ねずみが座る。大国主を野火から救ったネズミにちなむもので、水玉を抱くネズミは子授けや繁栄、巻物を抱くネズミは学業の守り。→ 神社
日本の縁起
- 大黒天の使い:七福神の大黒さまは、打ち出の小槌を手に、米俵に乗る福の神。インドの神が元になり(→ 黒)、「だいこく」の音が通じる大国主と重ねて祀られるようになった。ネズミはその使いとされる
- 大国主を救ったネズミ:『古事記』で、根の国のスサノオは大国主に、野原に射こんだ鏑矢を拾いに行かせ、その野に火を放った。逃げ場のない大国主の前にネズミが現れ、「内はほらほら、外はすぶすぶ」(中は広く、入口はすぼまっている)と教えた。足元を踏むと穴に落ち、隠れている間に火は上を通り過ぎた。ネズミは鏑矢をくわえて持ってきたが、その矢羽は、ネズミの子どもたちが食べてしまっていた。因幡の白兎を助けた大国主が、今度はネズミに助けられた話。→ うさぎ
- 甲子の日:十干の甲と、ネズミの「子」が重なる60日に一度の日。大黒さまの縁日とされ、各地の大黒天で祭りが開かれる
- 嫁が君:正月の三が日には、ネズミを「嫁が君」と呼びかえる忌み言葉があった。大黒さまの使いとして親しまれたネズミの、年のはじめだけの呼び名で、新年の季語にもなっている
- 白鼠と黒鼠:商家では、主人を大黒さまに見立て、主家に忠実に仕えて店を栄えさせる番頭を「白鼠」と呼んだ。主家に害をなす者は「黒鼠」
- 鼠浄土:おじいさんが落とした握り飯を追って穴に入ると、ネズミの国に出て、もてなされて宝をもらって帰る。まねをした隣のおじいさんは、猫の鳴きまねをして穴が崩れる。「おむすびころりん」として知られる昔話
- ねずみの嫁入り:娘を世界一えらい婿に嫁がせたいネズミの親が、お日さま、雲、風、壁と訪ねていくと、壁が「私をかじるネズミの方がえらい」と言う。娘は結局、ネズミのもとへ嫁いでいく
- 子は繁盛・鼠算:干支にちなんだ相場の格言では、子年は「繁盛」。江戸時代の算術書『塵劫記』には、正月に12匹の子を産んだ親ネズミが、毎月子と孫とともに産み続けると、12月には276億8257万4402匹になるという「鼠算」の問題がある
- 十二支の一番:神様のもとへ元日の朝に挨拶に来た順に十二支を決めたとき、ネズミは夜明け前に出た牛の背中に乗っていき、門が開くと飛び降りて一番になったという昔話がある。猫に一日遅い日を教えた話も、同じ昔話の中にある。→ 牛、猫
タロットのネズミ
ウェイト版にネズミの描かれた札は無い。ネズミの蓄える力、こつこつ働く小ささ、家の繁栄と重なる札を並べて読む。
- ペンタクルの4:冠をかぶった人物が、金貨を一枚胸に抱えこみ、冠の上に一枚、両足の下に二枚を置いている。持っているものを手放さない札。米をかじるネズミの夢の日にこの札が出たなら、守るべき蓄えは今のうちに囲っておく
- ペンタクルの8:若い職人が腰掛けて、金貨を一枚ずつ彫っている。できあがった金貨は柱に掛けて並べてある。ネズミが少しずつ運ぶように、小さな仕事を積み重ねる札。白いネズミの夢と重なったなら、地道な手間がそのまま実りになる
- ペンタクルの10:アーチのある門のあたりに、老人と二匹の犬、若い夫婦と子どもがいて、十枚の金貨が画面に散りばめられている。何代も続く家の豊かさの札。ネズミの赤ちゃんがたくさんいる夢のあとに出たなら、家族の繁栄の夢として受け取っていい。→ 犬
世界の象徴としてのネズミ
- ガネーシャのネズミ:インドの象の頭をもつ神ガネーシャは、ネズミを乗り物にしている。障害を取り除く大きな神が、どんな隙間にも入りこむ小さなネズミに乗る
- アポロン・スミンテウス:ホメロス『イーリアス』の冒頭で、アポロンの神官クリュセスは、神を「スミンテウス」(ネズミの神)と呼んで祈る。小アジアにはこの名のアポロンの神殿があった
- 十二支の子:中国から伝わった十二支では、ネズミが一番目。方角は北、時刻は真夜中の0時ごろ。十二支の最初であり、一日のはじまりの刻でもある
『古事記』のネズミは、火に囲まれた大国主に足元の穴を教え、焼け跡から鏑矢をくわえて戻ってきた。その矢羽は、子どもたちが食べてしまっていた。夢の中のネズミが何をくわえていたか、何をかじっていたかを覚えておくと、その夢がどちらの顔のネズミだったかが分かる。

関連する項目
黒・白・お金・宝くじ・家・神社・猫・牛・犬・追いかけられる・うさぎ
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大アルカナから一枚。
