金魚

金魚は、人が器の中で大事に育ててきた、小さな喜びの魚として読まれてきた。野のフナから生まれ、鉢や水槽の中で、見て楽しむためだけに色と形を磨かれてきた。夢に出てくる金魚は、自分が手元で育てている楽しみや恋、ささやかなお金の巡りを表す。そこに、中国から来た金運の読みと、江戸の軒先に下がっていた金魚玉の涼しさが重なる。
金魚の夢
金魚の夢は、夢占いでは吉夢とされることが多い。表しているのは、楽しみ、恋愛、金運、そして自分がいま大切にしているもの。鯉が流れに逆らって上へ登る魚なら、金魚は器の中でひらひらと泳ぐ魚で、大きな出世より、暮らしの中の満ち足りた気持ちを映す。→ 鯉
読み分けの鍵は、鉢の水の様子。金魚は自分では水を選べない。澄んだ水ですいすい泳いでいたなら、いまの暮らしは自分に合っていて、楽しみや恋が順調に育っている。水が濁っていたり、金魚が口をぱくぱくさせていたりしたなら、自分を取り巻く環境に少し息苦しさがある。→ 水もう一つは、金魚の数と大きさ。増えていく金魚、大きく育った金魚は、手元のものが実ってきた知らせ。
大きい金魚・でかい金魚の夢
思っていたより大きな金魚が泳いでいる夢は、小さく始めたことが大きく育っている夢。趣味やちょっとした副業、軽い気持ちの恋が、いつの間にか自分にとって大きな存在になっている。鉢からはみ出しそうなほど大きかったなら、器のほうを広げる時期に来ている。
たくさんの金魚の夢・金魚が増える夢
金魚がどんどん増えていく夢は、金運と楽しみが広がる夢。人の輪が広がって、誘いや話が次々に舞い込む。色とりどりの金魚だったなら、いろいろな方面から喜びが届く。増えすぎて鉢がいっぱいになっていたなら、抱える楽しみや予定が多すぎて、一つひとつに手が回らなくなりかけている。
金魚すくいの夢
夏祭りの金魚すくいの夢は、好機をつかむ夢。すくえた金魚は、自分でつかみ取った幸運や恋。何匹もすくえたなら、いまは思い切って手を伸ばしていい。ポイがすぐ破れた夢は、焦って大きく動きすぎている。水面近くの金魚を、そっと端からすくうくらいの加減で、うまくいく。
金魚鉢・水槽の夢
金魚鉢は、自分を守っている場所、家や職場や、身近な人との関係を表す。きれいに整った鉢なら、その場所は居心地がいい。水換えをする夢は、気持ちや人間関係を入れ替えて、自分からよい流れを作る吉夢。
金魚鉢が割れる夢は、驚く夢だが、守られた場所から外へ出ていく時期の知らせでもある。狭くなった器が割れて、もっと広い水へ移っていく。
金魚が水槽から飛び出す夢
金魚が自分から鉢の外へ飛び出す夢は、いまの場所に収まりきらなくなった気持ちの表れ。新しいことを始めたい、環境を変えたい、という思いが強くなっている。飛び出した金魚を鉢に戻してやった夢なら、焦らず元の場所で準備を整えるほうが、あとで大きく泳げる。
金魚が逃げる夢
すくおうとした金魚、つかまえかけた金魚が逃げていく夢は、手に入れかけた楽しみや恋が、まだ自分のものになりきっていない夢。追いかけすぎずに待つと、また近くへ泳いでくる。
金魚が死ぬ夢・死にかけの金魚を助ける夢
金魚が死んでいる夢は、ひとつの楽しみや関係が区切りを迎える夢。気持ちが冷めかけているもの、無理に続けているものがないかを見る時期。水が汚れていたなら、自分を取り巻く環境を整えるほうが先。
弱った金魚を水に戻して助ける夢は、いったん元気をなくしたものを、自分の手で持ち直せる夢。恋や友情なら、もう一度温め直せる。
金魚を飼う夢
金魚を飼いはじめる夢は、新しい楽しみや、守りたいものができる夢。恋のはじまりとして読まれることも多い。
トイレに金魚がいる夢
トイレに金魚が泳いでいる夢は、不思議な夢だが、トイレは流して入れ替える場所。いらないものを流したところに、新しい楽しみやお金が入ってくる。→ トイレ
金魚の色
- 赤・オレンジの金魚:恋と金運。明るい気持ちで動ける時期。→ 赤
- 黒い金魚(黒出目金):見えないところで支えてくれる力の夢。風水では、黒は水を表し、金運を補う色とされる。→ 黒
- 白い金魚:心が澄んでいく夢。人間関係が穏やかになる。→ 白
- 金色の金魚:金運の夢。宝くじの夢として引かれることも多い。→ 金色、宝くじ
現実で金魚に出会ったとき
- 飼っていた金魚が死んだ:スピリチュアルでは、金魚は飼い主の身代わりになって災いを引き受けてくれる、とよく言われる。守ってくれたものとして、感謝して見送る
- 夏祭りで金魚すくいをした:すくえた金魚は、その夏の小さな福を持ち帰ったしるし
- 金魚を飼いはじめる:風水では、金魚はお金を呼ぶ魚。黒い金魚を一匹まぜる、1匹・6匹・7匹がよい、など数と色の決まりがあるが、数は流派によって違う。水をきれいに保つことは、どの流派でも変わらない。→ お金、数字
日本の縁起
- 金魚の渡来:金魚は中国の長江の下流あたりで、フナの赤い変わりものから生まれた。日本へは、文亀2年(1502年)に和泉国の堺へ渡ってきたと、江戸時代の飼育書『金魚養玩草』に記されている
- 金魚売りと金魚玉:江戸時代の中ごろには、金魚は庶民の楽しみになった。夏になると金魚売りが町を回り、縁日には桶を並べて金魚が売られた。買った金魚は「金魚玉」と呼ばれる丸いガラスの器に入れて持ち帰り、軒につるして眺めた。金魚も金魚玉も、夏の季語
- 金魚すくい:江戸時代の浮世絵には、子どもが金魚を釣ったり網ですくったりする姿が描かれている。紙を張った「ポイ」ですくうようになったのは大正のころから。金魚の町、奈良県大和郡山市では、1995年から全国金魚すくい選手権大会が開かれている
- 金魚ねぷた:弘前の夏のねぷたまつりに欠かせない、金魚の形の灯籠。金魚が上流の人しか飼えない高級な魚だったころ、憧れた庶民がそれをねぷたにして、子どもたちに提灯のように持たせて歩いたとされる。「金」の字から、金運を呼ぶ縁起物にもなっている
- 柳井金魚ちょうちん:山口県柳井市の民芸品。幕末のころ、ロウソク屋を営んでいた熊谷林三郎が、弘前の金魚ねぷたをヒントに作りはじめたと伝わる。地元の織物、柳井縞の染料で赤く染めてある
タロットの金魚
ウェイト版に金魚は描かれていない。水と心を受け持つカップの組に、金魚鉢の読みと重なる札がある。
- カップのペイジ:若い小姓が手にした杯から、一匹の魚が顔を出し、小姓をじっと見上げている。ウェイトはこれを「心に描いたものが形をとる姿」と書いた。器の中から魚がこちらを見ている像は、金魚鉢そのもの。金魚の夢を見た日にこの札が出たなら、思い描いていた楽しみや恋が、形になりはじめている
- カップの3:庭で三人の娘が、杯を高く掲げて祝い合っている。実りと祝いの札。夏祭りの金魚すくいの夢と、同じにぎわいをもつ
世界の象徴としての金魚
- 中国の金魚:「金魚」は「金余(お金が余る)」と同じ音で、豊かさを呼ぶ魚とされる。宋の時代には、いまの上海に近い嘉興で、金魚を放して功徳を積む放生が行われたと伝わる
- 韓国の胎夢:子を授かる前後に見る夢「胎夢(テモン)」で、金魚は娘や、芸術の才を持つ子の知らせとされる。鯉が学問や官職の知らせとされるのと対になっている。→ 妊娠
金魚ねぷたは、金魚を飼えなかった人たちが、憧れを紙と灯りで形にしたものだった。子どもたちはその灯りの金魚を手に、夏の夜道を歩いた。夢の中で泳いでいた金魚も、まだ手元の鉢にいなくても、自分が何を大事に育てたいと思っているかを灯して見せている。

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