鯉

鯉は、流れに逆らって上へ登っていく魚として読まれてきた。黄河の急流を登りきった鯉は龍になる、という中国の言い伝えがあり、日本ではそれが鯉のぼりになって、子どもの出世を願う五月の空に泳いでいる。夢でも縁起でも、鯉が出てくるところには「力をためて、ひと息に上へ抜ける」という筋が通っている。そこに、池で人の手から餌をもらう錦鯉の、豊かさと落ち着きの読みが重なる。
鯉の夢
鯉の夢は、夢占いでは吉夢とされることが多い。表しているのは、向上心、出世、粘り強さ、そして暮らしの豊かさ。鯉は泥の多い池でもよく生き、長生きする魚なので、しぶとく続く運の夢でもある。
読み分けの鍵は、鯉の勢い。水をはね上げるほど元気に泳いでいたなら、自分の中の上へ向かう力も勢いづいている。底でじっとしていたなら、力をためている時期。次に見るのは、水の澄み具合。澄んだ水の鯉は運の流れがすっきりしていて、濁った水の鯉は、力はあるのに周りの事情で見通しが悪くなっている。水そのものの読みは → 水
大きな鯉の夢・巨大な錦鯉の夢
目の前に大きな鯉が現れる夢は、大きな好機の夢。仕事や学びで、ひと回り大きな役目が巡ってくる。見上げるほど巨大だったなら、自分ではまだ大きすぎると思っている話が、実は手の届くところにある。錦鯉だったなら、そこに華やかさが加わって、人から認められる形で実る。
たくさんの鯉の夢
池いっぱいに鯉がひしめいている夢は、豊かさの夢。人の縁やお金の入り口が、一度にいくつも開く。鯉たちが自分のほうへ寄ってきたなら、周りの人が力を貸してくれる時期。ばらばらの方向へ泳いでいたなら、やりたいことが多すぎて、力が散りかけている。
池の鯉に餌をやる夢
餌を投げると鯉が口を開けて集まってくる夢は、自分が差し出したものが、ちゃんと受け取られている夢。仕事なら手をかけてきたことに人が集まり、人間関係なら、自分の気づかいが相手に届いている。鯉が餌を食べなかったなら、差し出す相手や時期を少し見直していい。
鯉が跳ねる夢
水面から鯉が跳ね上がる夢は、停滞を抜ける夢。長く動かなかったことが、ある日ふっと動き出す。高く跳ねたほど、その変化は大きい。水しぶきを浴びたなら、その勢いが自分にも移ってくる。
鯉を釣る夢・捕まえる夢
鯉を釣り上げる夢は、狙っていたものを手にする夢。大物の鯉なら、試験、昇進、契約のような大きな結果につながる。錦鯉を釣る夢は、恋愛の夢として読まれることも多い。鯉と恋は同じ音なので、錦鯉を手にしたなら、心惹かれる相手との距離が縮まる。途中で逃げられたなら、あと一歩のところで手を離さずにいる時期。→ 好きな人
鯉に噛まれる夢
鯉に指を噛まれる夢は、向こうから強く求められる夢。思いがけない誘いや話が舞い込む。鯉には鋭い歯がないので、驚いても痛みの少ない夢なら、その誘いは受けて大丈夫なもの。
鯉を食べる夢
鯉こくや洗いを食べる夢は、力を取り込む夢。鯉の粘り強さや生命力を、自分のものにしていく。おいしかったなら、疲れていたところに力が戻ってくる。
鯉が死ぬ夢・弱った鯉の夢
腹を見せて浮かぶ鯉は、上へ向かう気力が一度途切れている姿。無理をして泳ぎ続けてきたなら、休むことを先にしていい。水を替えて鯉が元気を取り戻した夢なら、環境を変えれば力はすぐ戻る。
白い鯉・黒い鯉・赤い鯉・金色の鯉の夢
- 白い鯉:清らかさと守りの夢。迷っていたことに筋が通り、心が落ち着く。→ 白
- 黒い鯉(真鯉):鯉のぼりのいちばん上を泳ぐ真鯉の色。家を支える力、重みのある立場を表す。黒い鯉が怖かったなら、背負っているものの重さに気づいている夢。→ 黒
- 赤い鯉(緋鯉):情熱と恋愛。気持ちを表に出すと、流れがよくなる。→ 赤
- 金色の鯉:金運と出世が重なる夢。宝くじを買いたくなる夢として知られる。→ 金色、宝くじ
鯉が滝を登る夢・龍になる夢
努力が実を結んで、一段上へ上がる夢。試験や昇進の前に見る人が多い。→ 龍、試験
鯉のぼりの夢
青空に鯉のぼりが高く泳いでいる夢は、家族の繁栄と、子どもの成長の夢。風をはらんでいたなら、運が追い風に乗っている。たくさんの鯉のぼりが川を渡っている夢は、人の輪の中で自分も伸びていける時期。風がなくて垂れていたなら、いまは動くより、風を待つ。
鯉の夢と妊娠
韓国には、子を授かる前後に見る夢を「胎夢(テモン)」と呼んで大事にする習わしがあり、鯉はその代表的な像のひとつ。鯉の胎夢は、学問や立身で身を立てる子を授かる知らせとされてきた。→ 妊娠、赤ちゃん
現実で鯉に出会ったとき
- 神社やお寺の池で、鯉がこちらへ寄ってきた:池の鯉は、境内の水に住む生き物。足を止めたときに鯉が集まってきたなら、迎えられていると受け取っていい。→ 神社
- 鯉が跳ねるのを見た:夢と同じく、止まっていたことが動き出す合図として受け取れる
- 鯉の絵や置物を飾る:滝を登る鯉の絵や、龍と鯉を一緒に描いた絵は、出世と商売繁盛を願って玄関や店に飾られる
日本の縁起
- 鯉のぼり:江戸時代、武家が端午の節句に幟や旗指物を飾っていたのを町人がまね、登竜門の言い伝えにあやかって鯉の形にしたのが始まりとされる。初めは黒い真鯉だけだった。明治の終わりから大正にかけて、赤い緋鯉と一対で揚げるようになり、昭和30年代の後半には小さな青い鯉が加わった。緋鯉は母、子鯉は子どもとされるようになったのは、このとき
- 登竜門・鯉の滝登り:黄河の急流「龍門」を登りきった鯉は龍になる、という言い伝え。立身出世のたとえになった。→ 龍
- 俎板(まないた)の鯉:まな板にのせられた鯉は、一度はねたあと、覚悟を決めてじっと動かないとされた。そこから、もう相手に任せるしかない状態をいう。潔さの像でもある
- 錦鯉:新潟県の小千谷市と長岡市の山古志あたり、昔「二十村郷」と呼ばれた山の村が発祥とされる。江戸時代の後期、食用に育てていた真鯉から色の変わった鯉が生まれ、それを大事に育てたのが始まり。明治に紅白、大正に大正三色、昭和に昭和三色が作られた。「泳ぐ宝石」と呼ばれ、平成29年には新潟県の「県の鑑賞魚」になった
- 松尾大社の双鯉:京都の松尾大社では、神様が保津川の急流を鯉の背に乗って遡ったと伝わる。→ 亀
- 鯉と恋:同じ「こい」の音から、恋愛の縁起物にもされる
タロットの鯉
ウェイト版に、鯉そのものは描かれていない。水と感情を受け持つカップの組には魚が出てくる札があり、鯉の読みと重なる札もある。
- カップのキング:王の玉座は海の上に置かれ、片側には船、もう片側には水から跳ね上がる魚(ウェイトは「イルカ」と書いた)が描かれている。荒れた水の上でも動じずに座る、感情を治める力の札。鯉が跳ねる夢と、同じ水面を描いている
- ワンドの6:月桂冠をつけた騎手が、冠を飾った杖を掲げて進み、徒歩の人々がそれを囲む。勝利と、よい知らせの札。滝を登りきった鯉の夢を見た日にこの札が出たなら、夢と札が同じ到達を指している
世界の象徴としての鯉
- 琴高仙人:中国の仙人。川に入って龍の子を捕らえてくると弟子に言い残し、約束の日に鯉に乗って水から現れたという。日本でも「琴高乗鯉」の画題として、狩野元信や尾形光琳が描いた
- 年年有余:中国語では「魚」と「余」が同じ音で、魚は毎年ゆとりが残る豊かさを表す。正月の年画には、ふっくらした童子が大きな鯉を抱えた絵がよく描かれ、蓮と組むと「連年有余」、年ごとに余りが続くという願いになる。→ 蓮
- 韓国の胎夢:鯉は、学問や官職で身を立てる子の知らせとされる
琴高は、弟子たちに告げた日に、約束どおり鯉に乗って水から上がってきた。夢に出てきた鯉も、それまで水の底でじっとしていた力が、ようやく水面を割って出てくる日を知らせに来ている。

関連する項目
龍・亀・金魚・水・川・金色・白・黒・赤・神社・宝くじ・試験・好きな人・妊娠・赤ちゃん・蓮
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大アルカナから一枚。
