靴

靴は、自分がいま立っている場所と、そこから踏み出す一歩として読まれてきた。夢の靴は、仕事や家での立場、身につけてきた歩き方、次へ進む力を表す。日本では、履物はこの世と向こうの境を越えるときの道具でもあり、新しい履物をいつおろすか、鼻緒が切れたかどうかに、昔の人は気を配ってきた。靴がなくなる夢は落ち着かないが、夢占いでは、今の立ち位置の次を探しはじめた知らせとされる。
靴の夢
夢占いでは、靴は社会の中の役割と、行動する力の象徴。足は暮らしの土台で、靴はそれを守り、どこへでも運んでくれる。夢の靴がどんな状態だったかが、いまの自分の足場の状態を映す。
読み分けの鍵は二つ。
- 靴の状態:新しかったか、履き慣れていたか、汚れていたか、壊れていたか。状態のいい靴の夢は吉夢とされる
- 足に合っていたか:ぴったりだったか、きつかったか、ぶかぶかだったか。合わない靴は、合わない役目
靴がない・靴をなくす夢
帰ろうとして玄関や下駄箱を見ると、自分の靴だけがない。靴の夢のなかで、いちばん多く検索される夢。今の立場や役目に、自分でも理由が見えなくなっている知らせで、「このままここにいていいのか」という気持ちが、靴の消えた姿で出てくる。
見つかった夢なら、遠くからいい知らせが届く、自分の役割が改めて認められる、と読まれる。見つからないまま目が覚めたなら、疲れがたまっている。片方だけなくなった夢は、今は動かずに足場を固めておく時期。
靴を探す夢
たくさんの靴の中から自分のものを探し回る夢は、進む方向を決めかねている夢。見つかったなら、迷っていたことに答えが出る。他人の靴を履いて帰ろうとしていたなら、誰かのやり方を借りて歩いている自分に気づく時期。
靴を盗まれる夢
自分の立場や成果を、誰かに取られるのではという心配。職場に張り合う相手がいるときに見やすい。盗まれても慌てなかったなら、見方を変えれば、今の場所にこだわらなくていいという知らせにもなる。
新しい靴の夢・靴を買う夢
新しい環境、新しい役目、新しい出会いが近い知らせ。気に入った靴を選べたなら、その変化は自分から選び取るもの。買ったばかりの靴で靴ずれができたなら、新しい場所に慣れるまで少し時間がかかる。
靴をもらう夢
新しい役目を任される夢。くれた人が知っている人なら、その人が自分の次の一歩を後押ししてくれる。たくさんの靴をもらう夢は、選べる道がいくつもある時期。亡くなった人から靴をもらう夢は → 亡くなった人
靴を履き替える夢
今の立場から、別の立場へ移る夢。転職、引っ越し、関係の変化の前に見る。昔から「草鞋(わらじ)を履く」は旅に出ること、「草鞋を脱ぐ」は旅を終えて落ち着くこと。夢の中で靴を脱いで別の靴を履いたなら、一つの旅を終えて次の旅に出るところ。二足を代わる代わる履いていたなら、二つの役目を抱えている。
靴が合わない・左右が違う靴の夢
きつい靴は、今の役目が窮屈な夢。ぶかぶかの靴は、背伸びして引き受けたものがある夢。左右ちぐはぐな靴を履いていた夢は、仕事と家、表と内のつり合いが取れていない知らせ。
靴が汚れる・壊れる夢
泥で汚れた靴は、仕事や人づきあいで面倒ごとに巻き込まれそうな気がかり。汚れた靴を洗う、磨く夢なら、その気がかりは晴れていく。靴底がはがれる、かかとが取れる夢は、今の歩き方に無理がある知らせ。下駄や草履の鼻緒が切れる夢は、次の「日本の縁起」の言い伝えと重なる。立ち止まって足元を見直す時期として受け取る。
裸足の夢・靴を脱ぐ夢
裸足で外を歩いている夢は、二つに読み分ける。心細かったなら、守ってくれるものがない不安。気持ちよかったなら、肩書きや決まりごとを脱いで、身軽になりたい気持ち。家に上がるように靴を脱ぐ夢は、その場所に落ち着いていい知らせ。
たくさんの靴の夢
棚いっぱいの靴が並んでいる夢は、可能性や選択肢の多さ。どれを履くか迷っていたなら、欲張らずに一足を選ぶ時期。
色のついた靴の夢
現実で靴に出会ったとき
- 出がけに鼻緒や靴紐が切れた:昔から、出かける前の履物の切れは気をつける合図とされてきた。家を出る前に一度落ち着いて、忘れ物や予定を確かめる
- 靴紐がよくほどける:スピリチュアルでは、誰かが自分のことを思っている、噂している合図と受け取る人が多い
- 靴に鳥のフンが落ちた:「運がつく」と喜ばれる。→ 鳥
- 玄関の靴がそろっている:禅寺の玄関には「脚下照顧(きゃっかしょうこ)」の札が掛かっていることがある。足元をよく見よ、という禅の言葉で、履物をそろえることは、自分の心をそろえることだと説かれる。→ 家
日本の縁起
- 新しい履物を夜におろさない:昔は、野辺送りに近親者が新しい草履を履き、座敷からそのまま地面に下りて棺を送った。墓地や辻でその草履を脱ぎ捨ててくる土地もあった。夜に新しい下駄をおろすのが忌まれたのは、夜が死の世界に通じるからとされる。どうしても夜におろすときは、靴底に鍋墨を塗る、つばをつける、火にかざす、といったおまじないが各地に伝わる
- 座敷で履いて外へ出ない:同じ野辺送りの形から、家の中で新しい靴を履いてそのまま出ていくことも避けられてきた。新しい靴は玄関で履く。→ 葬式
- 鼻緒が切れると縁起が悪い:野辺送りのあと、死者が追ってこないように草履の鼻緒を切って墓に置いてきた、その形が裏返って、鼻緒が切れるのは不吉と言われるようになった、と説明されることが多い
- あした天気になあれ:履物を投げ上げて、表が出るか裏が出るかで天気を占う遊びは、昔から子どもの間で続いてきた
- 靴を贈る:靴は「踏みつける」ものなので目上の人には贈らない、靴を贈ると相手がそれを履いて離れていく、という俗説がある。反対に、新しい道を歩いてほしいという願いを込めて贈る人も多い
タロットの靴
ウェイト版に、靴を主役に描いた札は無い。ただ、足と一歩を描いた札がある。
- 愚者:黄色いブーツを履いた若者が、崖の縁で足を止め、空の向こうを見ている。ウェイトは、大地のしがらみにほとんど引き止められない「軽い足取り」と書いた。新しい靴の夢を見た日にこの札が出たなら、その靴で最初の一歩を出していい
- 星:裸の女性が、片膝を陸につき、片足を水にのせて、二つの壺から水を注いでいる。裸足の夢が心地よかったなら、身につけていたものを脱いで、癒えていく時期。→ 星
- カップの8:男が、並べた杯に背を向けて、ひとり歩き去っていく。靴を履き替える夢、靴をなくす夢と一緒に出たなら、これまでの場所を離れる時期が来ている
世界の象徴としての靴
- シンデレラ:シャルル・ペローが1697年に書いた話では、舞踏会の帰りに残していったのはガラスの靴だった。グリム童話の「灰かぶり」では金の靴で、姉たちは靴に足を合わせようと爪先やかかとを切り落とし、鳩が血に気づいて王子に知らせる。その人の足にしか合わない靴が、本当の相手を見つける
- 赤い靴:アンデルセンの童話(1845年)。赤い靴を履いた少女カーレンは、踊りをやめられなくなる。→ 赤
- 花嫁に古い靴を投げる:イギリスには、婚礼の日に新郎新婦の後ろから古い靴を投げると幸運を呼ぶ、という風習があった。ディケンズの『デイヴィッド・コパフィールド』にも、婚礼の日の出がけに、幸運を願って古い靴を投げる場面がある。車の後ろに靴や缶を結ぶ習わしは、ここから来たとされる。→ 結婚
- 燃える柴:旧約聖書の出エジプト記で、神は燃える柴の中からモーセに「足から履物を脱げ。あなたの立っている場所は聖なる地だから」と告げた
シンデレラが駆け下りた階段には、靴が片方だけ残っていた。王子は、その片方がぴったり合う人を探させた。夢の中で玄関じゅう自分の靴を探し回った朝も、探していたのは、今の自分の足にぴったり合う一足だった。

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