橋

橋は、こちら岸とあちら岸のあいだに架けられた道として読まれてきた。川や谷を越えて二つの場所をつなぐが、渡っている間は、どちらの岸にも属していない。夢の橋は、いま自分が移りかけている境目を映す。前の時期から次の時期へ、ひとりからふたりへ、迷いから決断へ。日本では、橋のたもとは向こう側の世界との出入口とされ、そこで死者が生き返り、鬼が現れ、通りすがりの人の言葉が占いになった。
橋の夢
橋の夢が表すのは、転機、決断、人と人との橋渡し、そして次の段階へ移ること。夢占いでは、橋を渡りきる夢は困難を越えて新しい場所に立てる吉夢、渡れない夢は、決めきれない迷いの夢とされる。
読み分けの鍵は、橋の丈夫さと、自分が橋のどこにいたか。石の橋か、揺れる吊り橋か、崩れかけた橋か。そして、たもとで立ち止まっていたか、真ん中にいたか、渡りきったか。たもとにいるなら決める前、真ん中にいるなら移っている最中、向こう岸に立ったなら、もう次の時期に入っている。橋ではなく舟で向こう岸へ渡っていた夢は → 船
橋を渡る夢
橋の夢のなかで、いちばん意味のはっきりした夢。ひとつの時期から次の時期へ移る知らせ。無事に渡りきったなら、転機を越えて新しい場所に立てる。向こう岸が明るかったなら、その先はもう開けている。夢占いでは、流れが一気に変わる夢として、渡りきった朝に宝くじを買う人もいる。→ 宝くじ
誰と渡っていたかも見る。好きな人と並んで渡っていたなら、二人の仲が次の段階へ進もうとしている。→ 好きな人
橋を渡れない・途中で引き返す夢
たもとで足がすくむ、真ん中まで行って引き返す夢。踏み出す前の迷いの夢。向こう岸へ行くことが本当に自分の望みか、まだ確かめている。引き返したなら、こちら岸にやり残したことがある。橋は、渡る日が来るまでそこに架かっている。
橋が落ちる夢・崩れる夢・壊れる夢
夢の中で橋が落ちるのは、頼りにしていた道筋が、形を変えようとしている姿。計画、人とのつながり、いまの立場。怖い夢だが、崩れたのは古い渡り方で、別の渡り方を探す時期に来ている。
助かった、崩れる前に岸へ戻れたなら、足場を失わずに立て直せる。崩れた橋を向こう岸から見ていたなら、もう戻らなくていい道が閉じた。洪水で橋が水に沈む夢は、あふれた気持ちに道がふさがれている。→ 川
橋から落ちる夢
橋の上から水へ落ちる夢は、移っている途中で足場が揺らぐ夢。自分で岸へ上がれた、誰かに引き上げられたなら、立て直す力も、助けてくれる人もいる。→ 落ちる。家族や他人が落ちる夢は、その人の変わり目を案じている気持ち。車ごと落ちる夢は → 車
吊り橋の夢
揺れる吊り橋は、不安定な中での挑戦。足もとが揺れて怖かったなら、いまの状況に確かな手応えがまだない。夢占いでは、吊り橋を渡りきった夢は、苦労しながらも目標にたどり着く吉夢に変わる。大きな吊り橋を揺れながらも歩ききったなら、その怖さごと越えていける。
高い橋・長い橋の夢
谷の上に高く架かった橋、向こう岸がかすむほど長い橋は、目の前の変化が大きい夢。それだけ遠くへ行ける橋でもある。下を見ずに歩けていたなら、目指す先に気持ちが向いている。
赤い橋の夢
神社の朱塗りの橋のような赤い橋は、良縁と、清められて向こうへ渡る夢。赤い橋を誰かと渡っていたなら、結ばれる縁の知らせ。→ 赤、神社
石の橋・木の橋の夢
どっしりした石の橋は、長く続く確かな道。「石橋を叩いて渡る」のことわざのとおり、慎重に進んでいい時期。古い木の橋、きしむ丸木橋は、手づくりの、まだ細い道。一歩ずつ確かめながら渡れば、向こうへ着ける。
橋の上で人と会う・待つ夢
橋の上で誰かを待つ、橋の真ん中で出会う夢は、二つの場所のあいだで結ばれる縁。離れている人との距離が縮まる。七夕の夜には、カササギが翼を連ねて天の川に橋を架け、織姫がそれを渡って彦星に会う、と語られてきた。→ 星
虹の橋の夢
→ 虹
現実で橋に出会ったとき
- 渡月橋を振り返らずに渡る:京都・嵐山の法輪寺には、十三歳の子が虚空蔵菩薩に知恵を授かりに参る「十三参り」がある。帰りに渡月橋を渡りきるまでに後ろの寺を振り返ると、授かった知恵が返ってしまう、と言い伝えられている
- 太宰府天満宮の三つの橋:本殿の手前、心の字をかたどった池に、三つの橋が続けて架かる。それぞれ過去・現在・未来を表し、渡って心身を清めてから天神さまのもとへ進む
- 嫁入りの前に渡らない橋:京都の一条戻橋には、嫁入り前の女性は近づかない習わしがあった。名前のとおり、実家へ戻ってこないように。宇治では、縁切りの神ともされる橋姫を避けて、婚礼の行列は宇治橋や橋姫神社の前を通らないとされてきた
- 「橋の下で拾った子」:昔の親がよく口にした冗談。橋の下や川岸は、空間を区切る境目で、霊的な力の集まる場所と考えられてきた。厄年に生まれた子を辻に置いて、頼んでおいた人に拾ってもらう「拾い親」の習俗もあった。子どもは、境目の向こうから授かるものだった
日本の縁起
- 一条戻橋:918年、学者の三善清行の葬列がこの橋を通ったとき、修行先から駆けつけた息子の浄蔵が棺にすがって祈ると、清行が一時生き返った、と伝わる。戻橋の名はそこから。陰陽師の安倍晴明は、使役する十二神将を妻が怖がったので、ふだんは橋の下に置いていたという。渡辺綱が、美女に化けた鬼の腕を斬り落としたのもこの橋のたもと。太平洋戦争のころには、出征する人と家族が、無事に戻ってくるようにと渡りに来た。→ 幽霊
- 橋占(はしうら):橋のたもとに立ち、渡っていく人の言葉を聞いて先行きを占った。『源平盛衰記』では、建礼門院の出産の折、母の二位殿が一条戻橋で橋占をすると、十二人の童が手を打ち、歌いながら渡っていった。晴明が橋の下に置いた十二神将が、童の姿で現れたとされた
- 宇治の橋姫:宇治橋に祀られる女神。『古今和歌集』には「さむしろに衣かたしき今宵もや我をまつらむ宇治の橋姫」と、恋人を待つ姿で詠まれた。一方で『平家物語』の剣巻には、妬みのあまり鬼になった女の話として語られる
- 天浮橋(あめのうきはし)と天橋立:『古事記』で、イザナギとイザナミは天と地のあいだの天浮橋に立ち、矛で海をかき混ぜて最初の島を作った。『丹後国風土記』には、イザナギが天に通うために立てていた梯子が、眠っている間に倒れて天橋立になった、とある。→ 神様
- 三途の川の橋:→ 川
タロットの橋
ウェイト版の大アルカナに、橋そのものが描かれた札はない。橋の絵柄があるのは小アルカナの2枚で、どちらも、橋を渡った先に建物が待っている。
- カップの5:黒い外套の人が、倒れた三つの杯を見下ろしている。背後にはまだ二つの杯が立ち、その先の川に、小さな館へ渡る橋。橋が崩れる夢、渡れない夢のあとにこの札が出たなら、振り向いた先にまだ橋は架かっている。→ 水
- ワンドの4:花輪を渡した四本の杖の向こうに、堀にかかる橋と古い館。ウェイトは、憩いの場、和合、繁栄の札とした。橋を渡りきって、迎えてくれる場所に着く夢の札。→ 旦那 大アルカナで橋の読みと重なるのは節制。橋は描かれていないが、天使が片足を地に、片足を水に置き、二つの杯のあいだで水を移している。そばから、地平の高みへまっすぐな道が延びる。二つの岸のあいだに立ってつなぐ札で、橋の上で人と会う夢と、同じ場所に立っている。
世界の象徴としての橋
- チンワト橋:古代ペルシャのゾロアスター教で、死者の魂が渡る橋。生前の善い思い、善い言葉、善い行いに応じて、善き者には広く、悪しき者には狭くなる。たもとは四つ目の犬が二匹で守っている
- ビフレスト:北欧神話の、神々の国と人の世界を結ぶ虹の橋。→ 虹
- ポンティフェクス:ローマ教皇の称号のひとつは、古代ローマの神官の長の名を引き継いだもの。「ポンティフェクス」は、ローマ時代から「橋を造る者」と解かれてきた語。語源には別の説もあるが、橋を架ける者が、神々に仕える者の長の名になった
嵐山の十三参りの子どもたちは、授かったばかりの知恵を抱えて、渡月橋を前だけ見て渡っていく。振り返れば返ってしまう、と言われた知恵を、橋の向こうの家まで持ち帰る。夢の中で渡りきった橋も、渡った先で何を抱えていたかを覚えておくと、その橋の意味になる。

関連する項目
川・虹・星・水・落ちる・車・赤・神社・神様・幽霊・好きな人・宝くじ・旦那・船
今日の一枚
大アルカナから一枚。
