船

船は、自分の暮らしそのものを乗せて、水の上を運んでいく器として読まれてきた。陸のように足もとは固くなく、波が来れば揺れ、風が変われば向きも変わる。それでも船は、歩いては行けない向こう岸や、見たことのない港へ人を連れていく。夢の船は、いま自分がどんな器に乗って、どんな水の上を進んでいるかを映す。日本では、福の神を乗せた宝船が初夢に来るのを待ち、その宝船はもともと、悪い夢を乗せて流し去る船だった。
船の夢
船の夢が表すのは、人生の道のり、運の流れ、これから向かう先、そして一緒に乗り合わせている人たち。夢占いでは、船は「人生」や「運命」そのものの象徴とされ、船出は新しい段階の始まり、港は落ち着ける場所とされる。
読み分けの鍵は三つ。船の大きさ、水の機嫌、自分が船のどこにいたか。大きな船なら暮らしの土台がしっかりしていて、小さな舟なら、身軽だが波をじかに受ける時期。凪いだ水なら物ごとが静かに進み、荒れた水なら気持ちが揺れている(→ 海)。そして、船に乗っていたか、岸から見送っていたか、乗れずに港に立っていたか。
船に乗る夢
船に乗り込んで岸を離れる夢は、新しい段階へ運ばれていく知らせ。転職、引っ越し、新しい関係。行き先が分かっていて落ち着いていたなら、その変化はもう自分で選んだもの。行き先の分からない船なら、流れに任せながら新しい土地へ向かう途中。
誰と乗っていたかも見る。家族となら、家の中が同じ方向へ進もうとしている。友達となら、その人と一緒に始めることがある。知らない人ばかりの船なら、これから出会う人たちと同じ流れに乗る。→ 知らない人
大きな船・豪華客船の夢
大きな船にゆったり乗っている夢は、暮らしの土台が安定している夢。豪華客船なら、恵まれた流れの中にいて、大きな機会が巡ってくる。甲板から広い海を見渡していたなら、先の見通しが立っている。
小舟・ボートの夢
手漕ぎのボートや小さな舟は、自分の力で漕いで進む時期。波の上下をそのまま受けるので、浮き沈みも大きい。湖の静かな水面を漕いでいたなら、ひとりで考えを深める時間。誰かと二人で漕いでいたなら、息を合わせて進める相手がいる。
船が揺れる夢・荒波の船の夢
揺れる船の夢は、足もとの落ち着かない時期。周りの事情に気持ちが振り回されている。大きく揺れても船が持ちこたえていたなら、その揺れは越えていける。船酔いしていたなら、いまの流れのペースに、体と気持ちがまだなじんでいない。
船が沈む夢・転覆する夢
夢の中で船が沈むのは、乗ってきた器がもう役目を終えようとしている姿。続けてきたやり方、頼ってきた場所、これまでの計画。怖い夢だが、器が沈むのは、次の船に乗り換える時期に来ているから。
助かった、脱出できたなら、器が変わっても自分は無事に次へ移れる。救命ボートに乗り移ったなら、小さくても新しい足場がもう用意されている。沈む船を岸から見ていただけなら、自分の手を離れたところで、ひとつの流れが終わろうとしている。
船から落ちる夢
甲板から水へ落ちる夢は、乗っていた流れから、ふいに外れる夢。予定が変わる、輪から外れた気がする。自分で泳いで浮かび上がれた、引き上げてもらえたなら、また乗れる。→ 落ちる。苦しくもがいた夢は → 溺れる
船に乗り遅れる夢
岸壁に着いたら船が離れていく夢。機会を逃すことへの焦りの夢で、焦りの読みは電車の夢と同じ(→ 電車)。ただ船は、電車のようには本数がない。そのぶん、乗り遅れた船の夢は「どの船に乗りたかったのか」をはっきりさせる。見送った船の名前や行き先を覚えていたなら、それがいま本当に行きたいところ。
船出の夢・船を見送る夢
自分が船出する夢は、始まりの吉夢。汽笛が鳴り、岸を離れる瞬間に胸が高鳴っていたなら、踏み出す準備はできている。
岸に立って船を見送る夢は、送り出す側の夢。誰かの門出を見届ける、手を離したものが遠くで実を結ぶのを待つ。寂しさが残ったなら、それだけ大事なものを乗せて送り出した。
港の夢・船が帰ってくる夢
港に停まった船は、落ち着ける場所の象徴。大きな港ににぎやかに船が出入りしていたなら、人や物の行き来が盛んな時期。遠くから船が港へ入ってくる夢は、待っていたものが届く知らせ。
宝船の夢
七福神を乗せた宝船の夢は、金運の吉夢の代表。宝船に自分も乗っていたなら、福の流れの中にいる。宝船が自分のほうへ向かってきたなら、福が入ってくる(下の「現実で船に出会ったとき」の入船)。→ 神様、宝くじ
舟で川を渡る夢
向こう岸へ舟で渡る夢は → 川
宇宙船の夢
宇宙船に乗る夢は、いまの暮らしの外へ、思いきり遠くへ行きたい気持ち。見たことのない世界への好奇心が高まっている。→ 飛ぶ
現実で船に出会ったとき
- 宝船の置物や絵を飾る:宝船には、舳先が左を向いた「入船」と、右を向いた「出船」がある。入船は、宝を積んだ船が港に入ってくる姿で、家に福が入るように、と家の中に向けて飾られることが多い
- 船に乗る猫:オスの三毛猫は航海のお守りとされてきた。→ 猫
- 船の名前の「丸」:日本の船の多くは「〜丸」と名づけられる。有力とされるのは、男の子の幼名の「麻呂(まろ)」が「まる」に変わり、刀や楽器のような大事な持ち物の名にも付けられるようになった、という説。『義経記』に「月丸」という船が出てくる。大切な子に名をつけるように、船は名前を持って送り出される
日本の縁起
- 宝船は、悪い夢を流す船だった:宝船の絵は、もとは悪い夢を乗せて流し去るためのものだった。室町時代ごろには、節分や大晦日の夜に船の絵を配り、それを敷いて眠って、翌朝、流したり埋めたりした。帆に「獏」の字を書き入れたのは、獏が悪い夢を食べると信じられたから。やがて七福神と宝物を積んだ吉夢を招く船になり、江戸では「おたから、おたから」と宝船の絵を売り歩く声が正月の町に響いた。枕の下に敷いた宝船でも悪い夢を見たら、翌朝その絵を川に流した。回文の歌は → 神様
- 船霊(ふなだま):船には船の守り神が宿るとされ、女性の髪、人形、銭、五穀、賽子などを御神体として船に納めてきた。船霊は女神とされる。奈良時代の763年には、荒れた海で遣いの船「能登」が船霊に祈った記録が残る
- 天鳥船(あめのとりふね):『古事記』では、船そのものが神として生まれる。イザナギとイザナミから生まれた鳥之石楠船神(とりのいわくすふねのかみ)、またの名を天鳥船神といい、国譲りのときには、建御雷神に従って天から遣わされた。→ 鳥
- 渡りに船:『法華経』の薬王品に、子が母に会えたように、渡ろうとするときに船を得たように、とある。困ったときにちょうど差し出される助けのたとえ
- 乗りかかった船:岸を離れた船は、途中で降りられない。始めたことは向こう岸まで、のたとえ
- 精霊船:→ 川
タロットの船
ウェイト版の大アルカナで船が描かれるのは、死神の奥の川に浮かぶ小舟くらい(→ 川)。船の夢の読みと重なるのは、小アルカナの札。
- ワンドの3:崖の上に立つ人が、背を向けて、海をゆく船を見下ろしている。ウェイトは、あれは彼の荷を積んだ彼の船だ、と書いた。船出を見送る夢、港で船の帰りを待つ夢の札で、送り出したものは、もう海の上を進んでいる
- ペンタクルの2:若者が二つのペンタクルを持って踊り、背後では大波の上を二隻の船が上下している。揺れる船の夢を見た朝にこの札が出たなら、波の上でも釣り合いは取れる。→ 海
- ソードの6:渡し守が、人を乗せた小舟を向こう岸へ漕いでいく。沈む船から救命ボートに移った夢の札で、運ばれていく先は静かな岸。→ 川、電車
- カップのキング:海の上の玉座の王、そばに船。→ 旦那
世界の象徴としての船
- ノアの箱舟:旧約聖書の創世記で、ノアは神の言いつけどおり、長さ300、幅50、高さ30アンマの箱舟を造り、家族とすべての生き物のつがいを乗せて大洪水をしのいだ。水が引き、箱舟はアララトの山に止まった。放した鳩の話は → 鳩、洪水のあとの虹は → 虹
- 太陽の船:古代エジプトでは、太陽神ラーは昼の船で空を渡り、夜の船に乗り換えて冥界を旅し、朝また東から昇ると考えられた。ギザの大ピラミッドのそばでは1954年、紀元前2500年ごろのクフ王の船が、1224の部材に分けられた姿で見つかった。全長43.4メートル。王を乗せて太陽とともに天を渡るための船だったとする説があり、いまは大エジプト博物館に置かれている。→ 太陽
- カロンの渡し舟:→ 川
- ナグルファル:北欧神話で、世界の終わりに現れる船。→ 爪
室町の人々は、節分の夜に配られた船の絵を敷いて眠り、朝になると、見た夢ごとその船を水に流した。沈む船の夢で目が覚めた朝も、その船はもう夢といっしょに流れていった。枕もとに残っているのは、これから乗る次の船の話。

関連する項目
海・川・水・電車・神様・宝くじ・落ちる・溺れる・知らない人・飛ぶ・猫・鳥・鳩・虹・太陽・爪・旦那
今日の一枚
大アルカナから一枚。
