海

海は、満ちては引き、すべての命を抱えている深いところとして読まれてきた。岸から見えるのは表面だけで、その下には底の知れない深さがある。夢の海は、自分の心のいちばん奥、ふだんは意識しない気持ちの広がりを映す。波が静かか荒れているかが、いま胸の奥がどれだけ動いているか。日本では、海の向こうから福が流れ着き、海の底には時の流れの違う国がある、と語り継いできた。
海の夢
海の夢が表すのは、心の深いところ、生命力、母のように大きなもの、そして人生の転機。夢占いでは、穏やかな海は気持ちの落ち着きと新しい可能性、荒れた海は、感情が大きく揺れている時期とされる。
読み分けの鍵は、海の機嫌と、自分が海のどこにいたか。凪いでいたか、波立っていたか。そして、岸から眺めていたか、波打ち際にいたか、海の中にいたか。岸にいたなら、自分の気持ちを外から見ている。海の中にいたなら、その気持ちの只中にいる。
綺麗な海・エメラルドグリーンの海の夢
透きとおった青や緑の海は、心が澄んで、運気が大きく開けている吉夢。沖縄のような南の海なら、張りつめていたものがほどけて、素直な自分に戻れる時期。魚やイルカが見えていたなら、その海には、これから出会う人や機会がたくさん泳いでいる。
荒れた海・大波の夢
白い波が打ち寄せる荒れた海は、感情が大きく波立っている夢。怒りや焦りが、自分でも抑えきれないほど高まっている。大波をかぶっても立っていたなら、その揺れに耐える力はある。船の上で揺られていた夢は → 船
津波の夢
夢の中の津波は、ふだん海の底に沈めている気持ちが、一度に押し寄せてくる夢。こらえてきたこと、言わずにきたこと、急に動き出した物ごと。怖い夢だが、それだけ大きなものが動き出す転機でもあり、夢占いでは、流れを一気に変える知らせとして、宝くじの夢と並べて読まれることもある。→ 宝くじ
逃げ切った、助かったなら、押し寄せる気持ちや変化を、自分の足でくぐり抜けられる。高いところから津波を見下ろしていたなら、そのうねりを外から見ていられる落ち着きがある。途中で目が覚めたなら、まだ向き合いきれていない気持ちがあって、夢がそこで一度、幕を下ろした。波が引いたあとの景色まで見ていたなら、その件はもう片づきはじめている。
海で泳ぐ夢・海の中の夢
澄んだ海を気持ちよく泳いでいたなら、自分の感情を思うように扱えている。友達と泳いでいたなら、その人とは深いところで通じ合える。濁った海、汚れた海を泳いでいたなら、澄ませたい気持ちが胸の中に沈んでいる。→ 水。深い海、暗い海を泳いで怖かったなら、自分の知らない自分に触れようとしている。サメに追われたなら、心のどこかにある警戒。海の中で息ができたなら、深い気持ちの中にいても、自分を見失わない。
海に落ちる夢・海に沈む夢
崖や船から海に落ちる夢は、足場が揺らいで、感情の中へ放り込まれる夢。助かった、自分で浮かび上がれたなら、立て直す力が残っている。苦しくもがいた夢は → 溺れる。車ごと落ちる夢は → 車
夜の海の夢
暗く静かな夜の海は、まだ形にならない不安と向き合う時期。ただ、月の光が海に道を作っていたなら、ひらめきが訪れる吉夢に変わる。→ 月
満潮・引き潮の夢
潮がどんどん満ちてくる夢は、気持ちや運気が満ちていく夢。満ちてくる潮から逃げていたなら、変化の勢いにまだ身構えている。潮が引いていく夢は、ひとつのことが終わって、引いたあとの浜に次のものが残る夢。
海辺を歩く夢・海に行く夢
波打ち際を歩く夢は、心の奥と日常の境目にいる夢。夕日の海辺なら、ひとつのことをやり終えた満ち足りた気持ち。誰と海へ行ったかも見る。好きな人となら、二人の気持ちが深いところへ進もうとしている。家族となら、家の中の気持ちが和らいでいる。→ 好きな人
現実で海に出会ったとき
- 海に呼ばれる気がする:スピリチュアルでは、海は浄化と生命の源とされ、無性に海へ行きたくなるのは、心と体が洗い流しを求めているとき、と読まれる
- お盆の海:お盆に海へ入ると、霊に足を引っ張られる、と各地で言い伝えられてきた。お盆は先祖の霊が帰ってくる時期で、水辺はその通り道と考えられた。→ 亡くなった人
- 海に立つ鳥居:→ 神社
- 満月の海:満月の頃は潮が大きく満ち引きする大潮にあたる(下の「満ち潮と引き潮」)
日本の縁起
- 浦島子:いちばん古い形は『日本書紀』と『丹後国風土記』にある。浦島子が釣りをしていると五色の亀がかかり、亀は美しい女性に姿を変えて、彼を海の向こうの仙境へ連れて行く。三年を過ごして故郷へ帰ると、三百年あまりが経っていた。開けてはいけないと渡された玉匣(たまくしげ)を開けると、中から美しいものが風と雲に乗って青空へ飛び去り、彼は二度と戻れないと知る。→ 亀
- えびす:七福神のえびすは、海から流れ着くものを神として迎える「寄り神」の信仰とつながっている。浜に寄った鯨やイルカを「えびす」と呼んで豊漁の神とする土地もあった
- 満ち潮と引き潮:人は満ち潮のときに生まれ、引き潮のときに息を引き取る、という言い伝えが各地にある。潮は月に引かれて一日にふつう二度満ちて二度引き、新月と満月の頃には満ち引きが大きな大潮になる。→ 月、出産
- 禊と海の神:『古事記』で、黄泉の国から戻ったイザナギが水に入って身を清めたとき、水の底・中・上で、海の神の綿津見の三柱と、のちに住吉大社に祀られる筒之男の三柱が生まれた。続いて生まれたスサノオは、海原を治めるよう任された。→ 神様、葬式
- 海千山千:→ 蛇
タロットの海
ウェイト版では、海は遠くの景色として描かれることが多い。その海が穏やかか荒れているかが、札の場面の気分を決めている。
- ワンドの3:崖の上に立つ落ち着いた人物が、背を向けて、海をゆく船を見下ろしている。ウェイトは、あれは彼の荷を積んだ彼の船だ、と書いた。送り出したものが、海の向こうで実を結ぶのを待つ札。穏やかな海を岸から眺める夢と同じ場面
- ペンタクルの2:若者が、両手にひとつずつペンタクルを持って踊っている。二つは横向きの8の字のような終わりのない紐で結ばれ、背後では大波の上を二隻の船が上下している。荒れた海の夢を見た朝にこの札が出たなら、波の上でも、踊るように釣り合いは取れる
- カップのキング:海の上の玉座の王。→ 旦那
- ソードの2:目隠しの女性の背後に、海と三日月。→ 迷う
世界の象徴としての海
- アフロディテ:ギリシャ神話の愛と美の女神。ヘシオドスの『神統記』では、海の泡から生まれたとされる。海は、美しいものが生まれてくるところ
- 紅海を渡る:旧約聖書の出エジプト記で、モーセが手を差し伸べると海が分かれ、人々は乾いた海の底を歩いて渡った。行く手をふさぐ海が、道に変わる
- ヨナ:旧約聖書のヨナは、神の言いつけから逃げて船に乗り、嵐の海に投げ込まれ、大きな魚に呑まれて三日三晩その腹の中にいた。そして陸へ吐き出され、やり直しの旅に出る
浜に鯨が寄ると、海辺の人々はそれを「えびす」と呼び、海からの授かりものとして迎えた。夢の海が荒れていても凪いでいても、目が覚めた朝の浜には、その海が運んできたものが何か打ち上げられている。

関連する項目
月・水・船・溺れる・車・亀・蛇・神社・神様・亡くなった人・出産・好きな人・宝くじ・迷う・旦那・葬式
今日の一枚
大アルカナから一枚。
