馬

馬は、人を遠くへ運び、願いを神様のもとへ運ぶ生き物として読まれてきた。昔は生きた馬を神社に納めて雨や晴れを祈り、それが板に描いた馬になって、今の絵馬になった。夢の馬は、自分を前へ運んでいく力と、その手綱をだれが握っているかを映す。乗りこなしていたか、振り回されていたかで、同じ勢いの読みが分かれる。
馬の夢
夢占いでは、馬は行動力、前進、仕事の運、そして体の中の活力の象徴。新しいことを始めようとしているとき、止まっていたことが動き出しそうなときに見やすい。
読み分けの鍵は、手綱。自分が乗って思う方へ進めていたなら、今の勢いは自分のもの。馬が勝手に走っていた、引きずられていたなら、勢いはあるが、行き先を決めているのはまだ自分ではない。馬が遠くを自由に駆けていたなら、その力はもうすぐ自分の手に来る。
馬に乗る夢
馬の夢のなかで、いちばん意味がはっきりしている夢。物事を自分の手で動かせる時期に来ている。軽く駆けていたなら、仕事や計画が順調に進む。並足でゆっくり進んでいたなら、急がないほうが遠くまで行ける。落馬したなら、勢いに頼りすぎていないか、足もとを確かめる時期。だれかと二人で乗っていたなら、その人と同じ方向へ進んでいく縁。
馬が走る夢
勢いの夢。広い野を群れで走っていたなら、周りの流れが自分を後押ししている。一頭だけで走り去っていったなら、追いかけたい目標がはっきり見えてきた。→ 飛ぶ
白い馬の夢
白い馬は、神社の神馬に選ばれてきた色で、馬の夢のなかでもいちばんの吉夢。願いに向かって、まっすぐ道が開ける。白い馬が先を歩いて自分を案内していたなら、京都の鞍馬寺を開いた僧・鑑禎が、夢のお告げと白い馬に導かれて山に入った話と同じ形の夢(下の「日本の縁起」)。→ 白
黒い馬の夢
抑えてきた力が、走り出したがっている。夢占いでは、黒い馬は強い意志や、表に出していない情熱。なついてきたなら、その力を使っていい時期。怖かったなら、自分の中の勢いに、まだ自分が追いついていない。→ 黒
茶色い馬の夢
地に足のついた働き手。茶色い馬の夢は、仕事や暮らしの土台が固まっていく夢で、毎日の積み重ねが報われる。茶色い馬を撫でていたなら、身近な人との信頼が深まる。
暴れ馬の夢・馬に襲われる夢
勢いが余っている夢。自分の気持ちや、仕事の忙しさが、手綱から外れかけている。暴れる馬を落ち着かせられたなら、その力を扱いきれる。遠くから暴れ馬を見ていただけなら、周りの騒ぎに巻き込まれずにいられる。
馬に蹴られる・噛まれる夢
夢占いでは、近くにいる人との行き違いの夢とされる。蹴られたのに痛くなかったなら、その行き違いは小さく、早く話せばほどける。馬の後ろに立っていて蹴られたなら、相手の見えないところに回り込みすぎている。
馬に追いかけられる夢
追ってくるのは、自分が置いてきた役目や、先延ばしにしている決断。逃げ切ったなら、今はまだ選ばなくていい。振り返って馬の背に乗った夢に変わったなら、その件は自分の味方になる。→ 追いかけられる
馬がなつく・馬を撫でる夢
気持ちの通じる相手ができる夢。馬は乗り手の気配をよく感じ取る生き物で、なついてくる馬は、自分が人に安心を与えられている時期を表す。顔を寄せてきたなら、恋でも仕事でも、相手の方から心を開いてくる。
子馬の夢
始まったばかりの計画や、生まれたばかりの縁。まだ脚は細いが、立ち上がるのは早い。子馬が母馬のそばにいたなら、見守ってくれる人がいる。→ 赤ちゃん
馬が2頭・たくさんいる夢
2頭の馬は、並んで進む相手。同じ速さで走っていたなら、仕事や恋の相手と歩調が合っている。たくさんの馬は、協力者や機会が一度に集まってくる夢。「うまくいく」にかけた九頭の馬の縁起物がある(下の「日本の縁起」)ので、群れが穏やかなら、なお吉。
馬が死ぬ夢
ひとつの働き方や、自分を運んできたやり方が役目を終える夢。区切りの夢で、次の乗り物に乗り換える時期。長く頼ってきたものに、ありがとうを言って降りる夢でもある。
神社の馬が出てくる夢
神馬や、神社の馬の像が出てくる夢は、願いが神様に届いている夢。絵馬を書いている夢なら、その願いはもう言葉になっている。→ 神社、神様
馬の夢と宝くじ
馬は勝負ごとの運とも結びつけて読まれる。白い馬、先頭を走る馬、自分が乗りこなしていた馬なら、運試しをしてみる時期として受け取っていい。→ 宝くじ
現実で馬に出会ったとき
- 神社で神馬に会った:伊勢神宮では、皇室から納められた神馬が、毎月1日・11日・21日の朝、正宮へお参りする。参道でその姿に会えたなら、神様への道を先に歩く馬に迎えられた、として受け取る人は多い
- 道ばたの馬頭観音に気づいた:江戸時代、馬が荷や人を運んでいた頃、道中で倒れた馬の供養と、旅の無事を祈って建てられた石碑。通りがかりに手を合わせる
- 蹄鉄を見つけた・もらった:西洋では、戸口に掛けて悪いものを入れない幸運のお守り(下の「世界の象徴としての馬」)
日本の縁起
- 絵馬:古くは、神様の乗り物として生きた馬を神社に納めた。京都の貴船神社では、雨を願うときは黒い馬、雨を止めたいときは白い馬や赤い馬を納めた。生きた馬の代わりに、板に馬を描いた「板立馬」を納めるようになったのが絵馬の始まりとされ、天暦2年(948年)の記録が残る。→ 雨
- 神馬:神様の乗る馬として神社で大切にされる馬。白い馬が多い
- 鞍馬寺の白い馬:宝亀元年(770年)、鑑真の弟子の鑑禎が、正月4日寅の夜の夢のお告げと白い馬の導きで鞍馬山に登り、毘沙門天に救われたと伝わる。→ 虎
- 左馬:「馬」の字を左右逆に書いた将棋の飾り駒で、山形県天童市の名産。「うま」を逆に読むと「まう」で、めでたい席の舞に通じる。馬は左から乗るもので、右から乗るとつまずくことから、左馬を持つ人はつまずかない、ともされる。商売繁盛や開店祝いに贈られる
- 馬九行久:九頭の馬を描いて「うまくいく」と読ませる縁起物。扇子や置物に描かれる
- 午の日:12日に一度巡る。2月最初の午の日は初午で、稲荷の祭りの日。→ 狐
- 白馬節会:年の初めに白い馬を見て邪気を払った平安の宮中行事。→ 白
- 精霊馬:お盆のきゅうりの馬。先祖が早く帰ってこられるように。→ 祖父
- 午年:十二支の7番目。2026年が午年で、次は2038年
タロットの馬
ウェイト版には、馬の描かれた札が多い。大アルカナの戦車を引くのは馬ではなく、白と黒のスフィンクス。
- 太陽:白い馬に裸の子どもがまたがり、赤い旗を掲げる。隠すもののない喜び。白い馬の夢の日にこの札が出たなら、夢と札が同じ明るさを言っている。→ 太陽
- 死神:黒い旗を掲げた骸骨の騎士が、白い馬でゆっくり進む。終わりと、その先の始まりの札。馬が死ぬ夢、馬を降りる夢と重なる。→ 葬式
- ワンドの6:月桂冠をかぶった騎手が、冠を結んだ杖を掲げて馬で進み、徒歩の人々が杖を持って並ぶ。勝利の凱旋と、よい知らせの札。馬に乗って進む夢のあとに出たなら、その道の先で迎えられる
- 4枚のナイト:各スートのナイトは、みな馬に乗っている。ウェイトはワンドのナイトについて「馬の動きが乗り手の性格を解く鍵」と書いた。跳ね上がる馬のワンドのナイトは勢い、全速で駆けるソードのナイトは突進、重い馬を止めているペンタクルのナイトは辛抱(→ 車)、静かに歩ませるカップのナイトは申し出と誘い(→ 好きな人)。夢の馬がどんな速さで走っていたかを、どのナイトの馬に近いかで読む
世界の象徴としての馬
- ペガサス:ギリシャ神話の、翼をもつ白い馬。英雄ペルセウスがメドゥーサの首を落としたとき、その体から生まれた。のちに英雄ベレロポンを乗せて空を駆け、最後は星座になった。→ 星
- スレイプニル:北欧神話の主神オーディンの、8本の脚をもつ馬。天と地と死者の国を行き来する
- 塞翁が馬:『淮南子』の話。国境の老人の馬が逃げたが、やがて良い馬を連れて帰ってきた。その馬から息子が落ちて脚を折ったが、そのおかげで戦に出ずに済んだ。何が福になるかは、先へ行かないと分からない
- 蹄鉄:鍛冶屋だった聖ダンスタンが、悪魔の足に蹄鉄を打ちつけ、「蹄鉄の掛かった戸口には入らない」と約束させて外した、という英国の伝説がある。戸口の蹄鉄は、そこから来た魔除けとされる
貴船の社に引かれていった生きた黒い馬は、やがて板に描かれた馬になり、今は小さな絵馬になって、社の軒にたくさん掛けられている。一枚ずつの板の馬が、書かれた願いを背に乗せて、今も神様のもとへ運んでいる。

関連する項目
虎・白・黒・神社・神様・雨・狐・祖父・太陽・星・葬式・車・好きな人・宝くじ・赤ちゃん・飛ぶ・追いかけられる
今日の一枚
大アルカナから一枚。
